研究概要 |
本研究は,電解重合絶縁性ポリピロール膜の尿素センサーへの適用を発展させ,この電解重合高分子膜の特性評価・制御をさらに進めることで,新規バイオセンサーへ応用する基礎検討および新たな反応場の設計指針を確立することを目的とし遂行された. 本研究では,絶縁性ポリピロール膜を用いた尿素センサーにおいて,電解重合法とポリイオンコンプレックス(PIC)法との組合せが酵素の固定化に有効であり,さらに,このセンサーのフローインジェクション分析への適用が可能なことを示した.また,この固定化方法の新たな酵素反応への適用を目的とし,特にクレアチニンセンサーを評価し,他のpH変化を伴う酵素反応での有効性を実証した.また,この過程において応答特性の改善から示唆されるPICの分子ふるい能の変化に関し,電気化学的手法による検討を行い,メカニズムに考察を加えた.さらに,同様に作製される尿素センサーをベースとして,測定物質の多様化を図ることを目的とし,バイエンザイム型アルギニンセンサーおよび酵素阻害型重金属イオンセンサーの作製について検討を行った.これらの検討から,酵素固定化にPICを用い,電解重合絶縁膜と組み合わせることにより作製されたバイオセンサーの様々な測定物質への適用性が示された.また,PIC種を変えることによりセンサーの高感度化が可能であることが示され,新規バイオセンサーの作製に関する設計指針が得られた.さらに,これらのバイオセンサーについてpH変化測定型の問題点である緩衝能依存性を排除するために,尿素センシングの新たな検出方式としてpHスタット型フロー電流検出への転換を検討した.これより,緩衝能に依存せず,簡便で高感度な尿素センシングシステムの構築が可能となり,より広いセンシングシステムの展開についての基礎的な設計指針を得た.
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