研究概要 |
当報告者らが開発し,種々の酸化物微結晶の合成法であることを明らかにしているグリコサーマル反応が,準安定相複合酸化物の一般的な合成法となり得ることを示すことを目的として研究を行った。平成9年度は,希土類酢酸塩と鉄アセチルアセトナートの反応で生成し準安定相の複合酸化物である六方晶LnFeO_3の生成過程を詳細に検討した。配位子の熱安定性が原料の反応性を支配していること,高温になるほど六方晶LnFeO_3の不安定性が増加し,溶解度が増加するので反応温度の増加とともに結晶径が大きくなること,反応系に他のガーネットを種結晶として添加した場合には,希土類鉄ガーネットが生成することなどを見出した。グリコサーマル反応で中間体として生成するグリコキシドの熱力学的不安定性が最終的に準安定相生成の要因になっていると結論した。平成10年度はインジウムアルコキシドと希土類酢酸塩,アルミニウムイソプロポキシドとガリウムアセチルアセトナート,チタニウムアルコキシドとケイ酸テトラエチルの反応などを検討した。最初の反応では希土類酸化物―酸化インジウム固溶体が生成し,構造未知の複合酸化物も副生することを見出した。2番目の反応では極めて高い表面積を持つγ-アルミナ―酸化ガリウム固溶体を得ることができた。最後の反応でも,熱力学的には不安定なアナタースにケイ素が固溶した生成物が得られ,この反応の場合にも,反応温度を低下させることにより極めて高い表面積を持つ生成物が得られた。このような検討の過程で,金属セリウムを2-メトキシエタノール中で直接反応させると250℃で20A程度も粒径を持つセリアの超微粒子を含む透明コロイド溶液が直接得られることを見出した。この系でも金属セリウムが酸化されるという非常に大きな反応の推進力を持っていることが,この特異な生成物を与える要因と考えられた。
|