研究概要 |
強誘電体であるSrBi_2Ta_2O_9薄膜は、分極反転による疲労が少ないため、不揮発性メモリへの応用が期待されている。 本研究では、Sr,BiおよびTaのアルコキシドを出発原料に用いたゾル・ゲル法により、SrBi_2Ta_2O_9薄膜を作製し,結晶化温度の低温化とその微構造および結晶性および配向性が強誘電特性に及ぼす影響について調べた。また、ゲル膜の仮焼初期段階での水蒸気の導入、Biシード層の導入による結晶性、配向性および強誘電特性に及ぼす影響についても検討した。Srアルコキシド、Biアルコキシド、Taアルコキシドを2-MeEtOH溶液に溶解し、SBT前駆体溶液を調製した。成膜は、スピンコーティング法によりPt/Ti/SiO_2/Si基板上に行った。ゲル膜の熱処理は、600〜850℃で結晶化させてSBT薄膜を得た。以下に本研究の成果を述べる。 1) ゾル・ゲル法においてアセチルアセトンを添加することにより前駆体溶液中の金属アルコキシドへの配位状態に大きく影響を及ぼし(00l)面に優先配向することがわかった。また、前駆体溶液から作製した薄膜は600℃で結晶化した。 2) SBTはC軸方向に分極軸をもたないため、C軸への配向度の増加にともない強誘電特性は低下した。 3) 適度な水蒸気の導入は結晶性の向上させる効果があるが、過度の導入は結晶性の低下、C軸配向および膜質の劣化などの原因となった。 4) Biシード層はC軸に配向を促進させるが、強誘電特性の改善に有効であった。 今後、更なる結晶化温度の低温化、初期段階での核生成の促進、配向制御および微構造制御のために前駆体溶液の調製を含めたプロセスの改善が必要である。
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