研究概要 |
金属アルコキシドをβ-ジケトンで化学修飾することにより、ゲル膜に光感応性という新規な機能を付与することができる。この特性を利用すると微細パターニングが可能であり、またプロセスの低温化が期待できる。本研究は、光アシストプロセスという新たな概念の基に、ゾル-ゲル薄膜の高機能化と微細バターニングプロセスの確立を目的とし、以下のような成果を得た。 1) β-ジケトンで化学修飾したAl_20_3,ゲル膜のうち、べンゾイルアセトンを用いたゲル膜が大気中で最も安定で,しかも感度が高いことを見いだした。さらに、ベンゾフェノンが増感効果を有することを明らかにした。 2) 化学修飾されたZrO_2ゲル膜のESCAスペクトルから,紫外線照射によりC原子の結合状態が変化するとともに,C含量そのものも減少することを見いだした。 3) オルトケイ酸エチルと化学修飾された,AI-アルコキシドから生成するAl_20_3,-SiO_2二成分系ゲル膜において,30mol%以上のAl_20_3,を含むゲル膜は光感応性を有することを明らかにした。 4) 化学修飾されたPZTあるいはPLZTゲル膜においても微細パターニングが可能であり、コーティングと乾燥を繰り返すプロセスで膜厚約1μmのゲル膜にパターニングを行うことができた。 5) マスクを通して紫外線を照射した光感応性ZrO_2ゲル膜上に色素を含むSiO_2ゲル膜を形成したのち,水でリンスを行うことにより、ZrO_2ゲル膜の紫外線未照射部にのみ選択的に着色させることができた。 6) 位相マスク法や二光束干渉露光法を用いて光感応性ZrO_2およびPZTゲル膜に回折格子を形成するためのプロセスを確立し,得られる回折格子の特性を評価した。 7) Si-アルコキシドの加水分解が、光酸発生剤の存在下で光によって制御できることを明らかにし、また,光酸発生剤を含むSiO_2ゲル膜でも紫外線照射によって微細パターンが形成できる可能性を見いだした。
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