研究概要 |
1. シクロカーボンの構造の分光学的研究:シクロ[n]カーボン(n=12,16,18,20,24)の前駆体を合成し、それらのレーザーデソープションマススペクトルにおいて発生させたシクロカーボンの紫外光電子スペクトル(UPS)を測定することにより、それらの構造について検討した。その結果、炭素数が4n個のシクロカーボンはポリイン構造であるのに対して、4n+2個の炭素数のものはクムレン構造であることが明らかになった。 2. カゴ型カーボンクラスター(C_<60>H_6)の生成とフラーレンへの異性化:ベンゼン環を核とするカゴ型化合物(C_<60>H_6)の脱水素-異性化反応によるフラーレンの合成について検討する目的で、三次元的シクロファン構造をもつC_<60>H_6の前駆体化合物を合成した。そのレーザーデソープションマススペクトルにおいて、C_<60>H_6だけでなく脱水素およびポリイン鎖の環化によって生成したと考えられるC_<60>も検出することに成功した。この結果は、ポリインの環化によりカゴ状のフラーレン構造が合成できる可能性を初めて実験的に示したものであり、金属内包フラーレンをはじめとする種々のフラーレン類の合成に重要な知見を与える。 3. 含窒素カーボンクラスター(C_<58>N_2H_4)の生成とジアザフラーレンへの異性化:ピリジン環をもつカゴ型分子(C_<58>N_2H_4)を、上記の方法と同様にその前駆体分子のレーザーデソープションマススペクトルによって発生させた。その結果、少量ながらも初めてジアザフラーレンC_<58>N_2の検出に成功した。これは、フラーレンアニオン類と等電子的である偶数の窒素原子を含むヘテロフラーレンを検出した初めての例であり、金属内包錯体の合成上も重要な知見である。
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