研究概要 |
次世代の新材料技術として,有機ケイ素を利用した高機能材料創製が期待されている。高真空条件下での化学反応の実験は,溶媒効果が存在しないため,反応機構を研究するのに適した方法である。本研究では,様々な種類の質量分析計を用いて,10^<-9>〜10^<-5>torrの真空下で,有機ケイ素のイオン-分子反応を行わせ,そのメカニズムを分子レベルで解明した。また,量子化学計算を行うことによって有機ケイ素イオンの単分子反応および2分子反応に,ケイ素の3dオービタルが関与しているかどうかも併せて検討した。 1. フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FT-ICR)装置を用いて,シラシクロブタンジメチル誘導体を電子衝撃イオン化し,Si=C二重結合をもつシレンカチオンを生成させ,アルケン分子と反応させた。その結果,4員環構造をもつadduct ionを生成することを確かめた。重水素ラベルしたイオンについても報告した。 2. 2-adamantyl-4-tert-butyl-2-trimethylsiloxy-1,1-bis(trimethylsilyl)-1-silacyclobut-3-eneの分子イオンのMS/MSでは,TMS脱離,tert-butyl脱離,および(TMS)_2O脱離によるピークが観測された。m/z330のフラグメントイオンは,分子イオンの(TMS)_2O脱離によって生成したSiC二重結合をもつシラシクロブタジエン誘導体イオンであると考えられた。精密質量測定の結果,m/z249イオンの化学組成はC_<14>H_<25>Si_2_+であり,[TMS-SiC-Ad]にプロトン付加したイオンであると予想された。
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