研究概要 |
1)置換キノジメタン(7-Alkoxycarbonyl-7,8,8-tricyanoquinodimethanes,7,7-Bis(alkoxycarbonyl)-8,8-dicyanoquinodimethanes,及び7,8-Bis(benzyloxycarbonyl)-7,8-dicyanoquinodimethane)の合成に成功した。単離にはエステル基にtert-butyl基の様な嵩高い置換基が必要であることが明らかになった。エキソ位に環状のメルドラム酸構造を有する7,8-Bis(alkoxycarbonyl)-8,8-dicyano-quinodimethaneは平面構造を有するためTCNQに相当する電子受容性を示し、スチレンとは交互共重合することが分かった。7,8-Bis(benzyloxycarbonyl)-7,8-dicyanoquinodimethaneのホモポリマーはフェニル基を有するため光分解性があり、主鎖の解裂で分解が起きることがあきらかになった。 2)置換キノンメチド(7-Alkoxycarbonyl-7-cyanobenzoquinone methides及び7-cyano-7-phenyl-benzoquinone methide)の合成に成功した。7-Alkoxycarbonyl-7-cyanobenzoquinone methidesの動力学検討より、重合は典型的な平衡重合であった。この置換キノンメチドの重合性がアルコキシ置換基の立体効果により決定されることが明らかになった。さらに、スチレンとの共重合様式のランダム型から交互型への変化がその平衡重合性との関係で説明できることを提案した。単独重合性のない7-cyano-7-phenyl-benzoquinone methideはスチレンと無触媒交互共重合するが、その重合機構は開始反応はbond-forming initiation theoryで説明できるが、生長反応は通常のラジカル重合機構で進行していることを明らかにした。 3)in situで発生させた1,4-ジカルボニル-1,4-ジヒドロナフタレンはベンゾキノン類と交互共重合して芳香族ポリエステルおよび芳香族ポリアミドが生成することを見いだした。芳香族ポリエステルおよび芳香族ポリアミドを合成するための新しい高反応性のモノマーとしてのキノイドモノマーを明らかにした。 4)ヘテロ置換キノジメタン類(2,5-Bis(dicyanomethylene)-2,5-dihydrofuran,2,5-Dimethylene-2,5-dihydrothieno[3,2-b]-thiophenes,及び2,5-Bis(1,3-dithiolan-2-ylidene)-2,5-dihydrothiophene)の合成に成功した。ヘテロ置換キノジメタン類のスチレンを含む三元共重合、ラジカル開始剤のヘテロ置換キノジメタン類への付加速度の検討より、重合反応性がベンゼノイド構造とキノノイド構造とのエネルギー差と密接に関連していることが明らかになった。エキソ位に環状のジチオラン環構造を有する2,5-Bis(1,3-dithiolan-2-ylidene)-2,5-dihydrothiopheneは酸素存在下でのみ重合が起き開環単位を有するポリマーが生成することがわかった。重合性のない置換キノジメタンであっても環の歪みエネルギーと芳香族化エネルギーを駆動力とすすれば重合が起きることが明らかになった。
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