研究概要 |
本年度は昨年度合成したポリマーの物性や生分解性を調べ,その結果を新たなポリマーの合成にフィードバックして,高融点を有し,物性ならびに生分解性にも優れた高分子の開発を目指した. 100℃以上の高融点を有するポリマーとして,(R)-β-ブチロラクトン[(R)-β-BL]/ε-カプロラクトン(CL)共重合体((R)-β-BL/CL>75/25),_L-ラクチド(_L-LA)/CL共重合体(_L-LA/CL>85/15),および_L-LAと_L-DMO(_L-3,_<DL>-6-ジメチル-2,5-モルフォリンジオン;環状デプシペプチドの一種)との共重合体(_L-LA/L-DMO>85/15)などが得られた.このうち,酵素(エステラーゼやプロテアーゼなど)による分解性に優れていたのは^L-LA/_L-DMO共重合体であった. 続いて,この_L-LA/_L-DMO(=92/8)共重合体の熱的および機械的特性を測定した.その結果,共重合体の熱的特性や引張り強度はポリ(_L-ラクチド)[poly(_L-LA)]に比べほとんど低下せず良好であったが,poly(_L-LA)固有の脆さ(柔軟性の欠如)の改善は達成できなかった.そこで,柔軟性の付与が期待されるCLユニットを導入して_L-LA/_L-DMO/CL三元共重合体を合成し,その物性や生分解性を調べた結果,CLを10mol%程度導入した(例えば,_L-LA/_L-DMO/CL=88/4/8)三元共重合体においてかなりの伸び(柔軟性)が発現し,引張り強度や酵素分解性も良好に保持されていることが判明した.今後,_L-LAと各種デプシペプチドおよびまたはラクトン類との共重合体を中心に合成し,さらに物性と生分解性に優れた新規高分子を開発する予定である.
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