研究概要 |
共役芳香族スルホニウム高分子が、新しい光電子物性を示す新物質と成りえることを実証するため、可溶性共役スルホニウム高分子の合成法を確立、超分極π共役構造と分子物性の相関解明を研究目的とした。 1) 低分子系共役スルホニウムの結晶電子構造の解明 分極構造を増幅させるように電子供与性置換基を持つ芳香族共役ポリスルホニウムを合成、単結晶を作製後、X線回折測定による結晶構造解析から、詳細な分子間距離、結合距離・角度をを決定した。置換基や対アニオンを変えて一連のスルホニウム化合物の基礎物性(発光・吸収波長、吸光係数、酸化還元電位、熱安定性(Tg,Td)、)などを測定、これらを構造と相関させて整理した。これを分子軌道計算(ab initio,PM3,AM1)を援用してLUMO,HOMO準位をもとめ、結晶構造と対比して超分極構造構築の要件をまとめた。 2) 超分極共役構造の反応性と物性 共役ポリスルホニウムをピリジンやハロゲンイオンなど塩基と接触させた脱アルキルにより、電子供与性基チオエーテルに変換、濃度と時間によりスルホニウム基の導入率を制御可能とした。従来までのスルホニウムに較べ脱アルキル反応は共役スルホニウムの方が速く進行する。共役により硫黄原子上の電荷密度が低下し、スルホニウムが不安定となり反応性が増加したものと考えられる。架橋した共役スルホニウム分子は、最大吸収波長が約500nm長波長ヘシフトした。架橋によりフェニル環の平面性が増加したためと考察できる。 3) 新しい合成法への展開 メタンスルフィン酸を硫黄源に用いた新しい芳香族求電子置換反応から、ジアリールメチルスルホニウムが定量的に得られることを見い出した。さらに、この反応を重合系へ展開、ポリ(メチルスルホニオ-1,4-フェニレン)の生成が始めて可能となった。従来重合不活性であったメチルフェニルスルホキシドも、アミン存在下では電荷移動錯体を経由して重合が進行し、同類のポリフェニレンスルホニウムを生成することが明かとなった。有用な新物質のスルホニウム誘導体を簡便に合成できる方法として確立できた。
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