研究概要 |
当該研究では,以下のような液晶性高分子溶液系の界面について,界面張力測定及び界面付近の液晶相中における高分子鎖の配向方向の決定を行なった: (1) 分子量分布の狭い1種類のリオトロピック液晶性高分子試料と低分子溶媒の系における,等方-ネマチック相界面および等方-コレステリック相界面. (2) 同一高分子種で分子量の異なる2種類の液晶性高分子試料と低分子溶媒からなる3成分溶液中で共存する等方-ネマチック相の界面. (3) 化学種の異なる2種類の液晶性高分子と低分子溶媒からなる3成分溶液中で共存する等方-ネマチック相の界面. (4) 上記の異種高分子を含む3成分溶液系にその2種類の液晶性高分子をブロックとして含む2元共重合体を少量添加した系において共存する等方相とネマチック相の界面. 以上のようなリオトロピック液晶性高分子溶液系における等方-液晶相界面についての界面張力測定はこれまでに例がなかった.界面張力は界面物性における最も基本的な物理量であり,したがって本研究は同界面についての定量的な議論を行う実験的研究の先駆けとなったと考えている.また,同界面の諸物性を分子論に基づき議論する目的で,これまでに幾人かの理論家によって提出された棒状高分子溶液系での等方-ネマチック界面張力の理論の改良を試み,得られた結果を界面張力および界面による液晶相の配向化に関する実験結果と比較した.この比較により,液晶性高分子溶液系の等方-液晶界面張力および界面による配向化を支配している分子論的な因子を明らかにした.
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