研究概要 |
流電電位法は坑井を利用して地下深部から電流を流し,これによって生じる電場を地表の電極で測定する坑井-地表間(hole-to-surface)の探査法である。この方法の特長は,1個の電位電極を移動するのみの簡単なフィールド調査で広い調査範囲を効率良く測定できる利点がある。しかし,測定データを定量的に解釈する場合には3次元モデルに対する数値計算および逆解析のプログラムが必要となる。 九州大学では,深部地下資源を直接探査するために坑井のケーシングパイプを線電極とする流電電位法を世界に先駆けて開発している。さらに,これを発展させた流体流動電位法を発明した。この流体流動電位法を生産井や圧入井へ適用すれば,坑井周辺地域の浸透流の挙動や流体の分布を3次元的に可視化できることが確かめられた。しかし,このような(空間,時間)の4次元探査法では毎時1,800回の割合で,流電電位および自然電位の測定データが取得されるために,これらの膨大データを効率良く解析できる3次元逆解析のソフトウエアの開発が急務であった。したがって,本研究では,まず任意の傾斜坑井(水平坑井)に対する流電電位法の基礎式を導出し,次いで差分近似法による3次元モデリングのプログラムを開発し,さらに非線形最小二乗法による逆解析により地下の比抵抗構造を3次元的に求めるソフトウエアを開発した。本研究の成果を実際のフィールド調査へ適用して,地下深部の浸透流の挙動をリアルタイムに可視化することができることを確かめた。
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