| 研究概要 |
リンゴのライプニング型ACC合成酵素遺伝子は基本型(1型)と,5'隣接領域にトランスポゾンの挿入がある対立遺伝子(2型)が存在する.2型ホモの'ふじ'と1/2型へテロの'ゴールデンデリシャス'を用いてノーザン解析を行ったところ,'ふじ'では転写量が極端に減少していた。そこで,熟期が異なる35の栽培品種のクリマクテリック果実内のエチレン濃度を測定したところ, 2型ホモ型品種は1型をホモ型またはへテロ型で有する品種に比べ果実内エチレン濃度が明らかに低かった.次にACS1のへテロ型同士,'王林'×'グラニースミス'の交雑実生個体から得られたF_113個体の果実についても同様の検討を行ったところ, 2型ホモのものは他の遺伝子型より明らかにエチレン濃度が低かった.さらに,へテロ型の集団は1ホモ型に上とべてエチレン濃度が低い傾向にあったことから,ACS1-2型遺伝子をもつリンゴの果実はライプニング時のエチレン生成量が少ないことが明らかになった.
適期収穫した栽培品種'ふじ'および'ゴールデンデリシャス'の保冷果実を25℃に静置し,3日毎にエチレン生成量と硬度を測定したところ,ACS1の遺伝子型の違いがそのままエチレン生成量の差となることを確認した.また,果肉より全RNAを抽出しACS1およびリンゴのACC酸化酵素(ACO), ポリガラクチュロナーゼ(PG),β-ガラクトシダーゼ(βgal)の各遺伝子をプロ―ブとしたノーザン解析より,PGやBgalの発現レべルが,硬度変化の品種間差,すなわちライプニングの進行速度の違いをもたらす直接的な原因と考えられた.さらに,エチレンの処理がこれらの遺伝子の発現パターンを変えたことが確認されたことより,ACS1の遺伝子型とライプニング進行の関係が考察された.
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