研究概要 |
スイートコーンは,主稈基部の節に2〜3本の分げつが形成される.本研究ではこの分げつを着生した株の雌穂重が分げつを除去した株に比べて大きくなる要因を生理・生態学的観点から検討し,分げつの役割を明らかにしようとした. まず,分げつ着生株と除去株における乾物生産特性と登熟期間中の光合成速度,葉色,出液量などの変化を検討した.その結果,絹糸抽出時以降から分げつは分げつ自身の成長を抑制して,分げつの同化産物を主稈のシンク活性が大きい雌穂などの器官に分配していた.分げつ着生株では分げつ葉が加わることで個体の総葉面積が大きくなり,登熟期に分げつ葉で生産された同化産物が主稈,特に雌穂に転流することで,雌穂穎果の登熟が良く,雌穂重が大きくなったと考えられた.一方,主稈の葉の老化過程に着目してみると,分げつ着生株では登熟後期まで根が健全で,主稈葉の老化程度が小さく,高い光合成能力を維持していた.よって,主稈葉の同化産物が継続的に雌穂に供給されることも雌穂重が大きくなった要因の一つであると考えられた. 次に,分げつ雄穂からの花粉が雌穂穎花の受粉,受精および登熟に及ぼす影響を検討した.その結果,主稈雄穂の花粉の飛散が終了する時期から分げつ雄穂の花粉は飛散を開始し,この花粉は受粉,受精および登熟能力を持っていることから,主稈雌穂の先端部穎花の受粉や受精に関与していた. 従って,分げつは分げつで生産された同化産物を雌穂に転流する働き,主稈葉の老化を抑制する働き,雌穂先端部の穎花の不受精粒を少なくする働きを持っていることが示された.
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