わが国に自生する園芸的に重要な野生キクについて基本的生育特性を調査し、分枝の発達する位置と長さにより種独特の草姿が決定されることを明らかとした。日長反応では、総ての種で12時間以下の日長でのみ開花する秋ギクタイプの種であった。開花に必要な最低夜温により、10℃以上のいずれの温度でも開花するグループ、15℃以上で開花するグループ、20℃以上でのみ開花するグループに分けられた。また、花芽分化過程を走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれの種も頭状花序の発達過程はよく似ていたが、小花の分化過程は種によって異なった。野生ギクと栽培ギクの正逆交雑を検討したところ、キクタニギクを除く総ての交配で種子が得られた。雑種第1代の実生個体について開花反応を調査したところ、子房親の夏秋ギクの持つ長い限界日長という性質は、容易に野生ギクとの後代に伝わった。ナカガワノギクの分布域は1950年代に報告されたものと基本的に一致したが、周辺環境の変化によりかなり狭くなっていた。現地から採取された36系統を自然条件下で栽培したところ、草姿、葉形、花形、開花期等に大きな種内変異が認められた。大型の草姿を示す系統は倍加した系統であった。また葉緑体DNAのPCR-RFLP解析により自生地植物集団の中に多型が存在する事が明らかとなった。
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