研究概要 |
'女峰'果実中の全アントシアニン濃度は果実の成熟に伴って増加したが,色相は41日目以降変化が見られなかった.着色の進行に伴っていずれの色素も濃度が上昇したが,全アントシアニン中の比率は着色始めから約20%であったことから,果実の着色程度はPdg-3MGの有無には影響しないと考えられた.日本で栽培されている20品種のうち11品種はPgd-3MGを生成し,残り9品種からは検出されなかった。果実のアントシアニン濃度は品種間で大きな差が認められ多が,Pgd-3MGを生成する品種と生成しない品種の間には有意な差が認められず,果色にも差が認められなかったことから,果実中のPdg-3MGの有無は、イチゴの果色発現には影響しないと考えられた。 Pdg-3MGを生成する'女峰'と生成しない'とよのか'自殖実生の分析結果から,イチゴ果実のPdg-3MG生成能は1遺伝子支配の優性形質であると考えられた。しかし,分析精度を高めて再検討したところ,'女峰'と'Darselect'自殖後代からトレースレベルでPgd-3MGを含む個体が見いだされた。検定の結果,多量に生成する因子と微量に生成する因子の2因子に支配されている可能性が高いと判断された。 野菜茶業試験場保存品種のうち,日本で育成された品種が海外で育成された品種よりPgd-3MGを生成しない品種の比率が高かった。中でも久留米支場育成品種の中にPgd-3MGを生成しないものが多かった。果実のアントシアニン組成と久留米支場で得られた果実の糖組成との関係について検討したが,Pgd-3MG生成能と実用形質との間に一定の関係を見いだすことはできなかった。
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