研究概要 |
果樹は樹が大きくなり、樹体の管理に多くの労力がかかるので樹を小さく仕立てる方法が求められている。そのひとつが矮化台木を用いる方法であり、リンゴではすでに世界的に商業栽培が行われている。モモではユスラウメやニワウメが矮化合木として試みられてきているが、接ぎ木後5.6年目までは順調に生育するが、その後接ぎ木不親和が現れ、樹勢が衰えてくる。適当な矮化台木がない果樹で、共台を使いながらなおかつ樹を矮化する方法が開発されれば大変有益である。本研究では種々の環状剥皮を主幹部,に施し、モモ樹の矮化が可能かどうかを2年生接ぎ木苗を用いて調査を行った。主幹の基部に幹周の1/2、2/3、3/3、1回螺旋、2回螺旋、3回螺旋の環状剥皮を行って、樹の生育量を測定した。環状剥皮の幅は5mmとし、螺旋のピッチは1cmとした。傷口の癒合を防ぐために、これらの処理は2週間毎に行った。生育が抑えられたのは、3/3剥皮区と2,3回螺旋区であった。他は対照区と差がなかった。葉内無機含量については、Nが3/3剥皮区と3回螺旋区で低く、Kは3/3剥皮区で著しく低く、2,3回螺旋区でわずかに低かった。CaとMgは3/3剥皮区でのみ低かった。一方、Mnは3/3剥皮区、2,3回螺旋区で高かった。3/3剥皮区、2,3回螺旋区で花芽形成が促進された。総伸長量及び冬季の剪定量も3/3剥皮区、2,3回螺旋区で小さかった。試験に用いた5個体のうち、3/3剥皮区では3個体が、2回螺旋区では1個体が枯死した。主幹部を流れる蒸散流は樹勢の強弱に密接に関係していた。また、カンキツの主幹部を1/2切断して、果実品質に及ぼす効果を調査したところ、切断された側の樹冠部に着生している果実の糖度が高まり、花芽形成が促進された。主幹部の流れる蒸散流も切断された側で速度の抑制が見られた。
|