研究概要 |
試料としては、市販胴裏用練羽二重を、非イオン性界面活性剤(ノニポール#200)の0.5g/l溶液を用いて、洗浄処理したものを用いた。金属イオンとしては、和光純薬製特級試薬塩化第二銅の2水和物(CuCl_2・2H_2O)、同じく塩化第二鉄の6水和物(FeCl_3・6H_2O)及び塩化アルミニウムの6水和物(AlCl_3・6H_2O)をイオン交換水に溶かして用いた。濃度は、それぞれ1×10^<-3>mol/lと5×10^<-4>mol/lの2種類を準備した。これらを用いて、30℃と80℃で、浴比1:30、5分・10分・60分処理した。それらの試料を、蛍光X線分析器を用いて、各金属イオンの吸着度合いを測定した。 その結果、これらはどのイオンも、処理時間の増加とともに絹繊維への吸着度合いを増加 していくことがわかった。また、銅イオンと鉄イオンは、処理開始よりほぼ5分までで、吸着度合いのMAX近くまで吸着されていることが判るが、アルミニウムイオンは、60分処理したこの先まだ吸着が進むことが予想される。 また、これらの金属イオンの1×10^<-3>mol/l、80℃、浴比1:30で60分処理したた試料を用いて、30℃と60℃で洗濯実験を試み、処理液の導電率の時間変化と一晩放置後の水素イオン濃度及び金属イオン濃度を測定したところ、銅イオンやアルミニウムイオンは鉄イオンより離脱しやすいことが判った。 更に、銅イオンを吸着させた絹繊唯は、未吸着の絹繊堆よりいずれの場合も染料の吸着量は小さくなり、先に吸着された銅イオンが酸性染料C.I.Acid Orange7の吸着を阻害することが判った。 今回の研究の結果、金属によって、浴濃度の高い方が、吸着度合いが小さくなったものがあったり、処理湿度による吸着の度合いも一定しないものがあったが、これらについては今後の研究課題としたい。 しかし、絹繊維への吸着や離脱の様子、また、その後の染色への影響の様子や傾向はある程度掴めたように思われるので、今後は、吸着や離脱の飽和量の絶対値や吸着・離脱の速度を求めることに主眼を置きたい。また、かなりの量の金属イオンを吸着するようであれば、現在廃棄されている、屑糸を利用して,ろ過剤に利用できないかを考えてみたい。さらに、吸着や離脱に金属の類別による選択特性が明らかになれば、吸着剤としても利用できるかもしれない。
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