研究概要 |
トウモロコシ(Zea mays L.dentcorn cv.W64A)乾燥種子に高いプロテイナーゼ活性が観察された。ゼラチンを基質として活性染色を行なったところ10%ゲル非変性電気泳動上でRf値0.45の主要な1本のバンドが検出された。同活性は乾燥種子胚(胚盤を含む)で高く,糊粉層を含む胚乳では殆ど検出されなかった。同種子の発芽は吸水後72時間目以降に起こるが,同活性は種子吸水後48時間で殆ど消失することから,同酵素が発芽初期段階で重要な働きを担っていると考えられる。同時期は種子の乾燥耐性に関与すると考えられているLEA関連タンパク質の種子胚内での予想分解時間と一致することから,同酵素の発芽誘導に関する役割が注目される。 本酵素はプロテアーゼの特異的阻害剤の影響からトリプシン様セリンエンドペプチダーゼであると考えられた。また,同酵素活性は粗酵素液内では不安定で,非変性電気泳動サンプルでも定性的・定量的な取り扱いが困難であった。また,この時点で1価のカチオン,特にナトリウム・イオンが存在すると失活率が高かった。粗酵素液からの45〜65%飽和硫安沈殿の脱塩画分を用いることによって少なくとも活性染色法では安定した活性を検出できるようになった。また、原因は不明だが、EDTAによる顕著な活性上昇が観察された。この上昇は金属イオンの添加実験から金属キレートの直接的な結果ではないことが示唆された。次に,本酵素の精製を行なった。イオン交換クロマトグラフィー,ゲル濾過法、疎水性クロマトグラフィー,非変性ゲル電気泳動ゲルの切り出しを組み合わせ,数種類の方法で分画を行なった結果、いずれの標品においてもSDS変性ゲル電気泳動上で分子マス45〜65kDの15本程度のペプチドが検出された。親和性クロマトグラフィーの結果も同様であったことから,本酵素は少なくともin vitroではこれらのペフチドと複合体を形成していると考えられた。
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