研究概要 |
グラム陰性細菌であるSphingomonas paucimobilis UT26のBHC分解に関与する酵素群の局在性を検討するために,UT26の細胞内成分を浸透圧ショック法でペリプラズム,細胞質,膜の3つの画分に分画し,それぞれの画分のBHC分解関与酵素群の酵素活性を測定し,その分布を調べた。分画の正当性は,局在性がわかっているマーカー酵素の活性測定と,各画分の構成タンパクの電気泳動パターンを比較することによって行った。その結果,LinA,LinB, LinC,LinD,LinEの各活性のほとんどがペリプラズム画分に存在することが明らかになり,分解反応の初期過程はぺリプラズム空間で行われていることが示された。特に,産物の精製・解析が進んでいるLinA,LinBについては,精製した酵素から作製した抗体を用いた解析も行った。すなわち,ウエスタンブロット法により,活性だけでなく,タンパク質自体がぺリプラズムに局在していることを明らかにすると共に,免疫電顕法により,LinA,LinBがペリプラズムに局在することを確認した。また,ぺリプラズム画分に存在するLinA,LinBのN末配列を決定したところ,いわゆるシグナル配列のスプライシングは受けておらず,既知のぺリプラズム局在化機構とは異なる機構で局在化していることが確認された。 以上,本研究において,xenobiotics の分解に関わる酵素群が新規の機構でベリプラズム空間に局在しているという新しい概念を提出することに成功した。新規の局在化機構を明らかにするまでには至らず,今後の課題として残ったが,linA欠失変異株にlinAを再導入する系を確立することに成功し,その準備を整えることはできたと考えている。
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