研究概要 |
超好熱菌Thermococcus profundusより広域基質特異性を有する新規アミノ基転移酵素(MsAT)を精製した。MsATはサブユニット分子量45000の二量体からなり、ピリドキサルリン酸酵素であった。また、MsATは極めて安定な酵素であり、80℃での半減期は4時間、70℃においてpH3-10の範囲で活性を失わなかった。MsATはAsp,Ser,Asn,Gln,Arg,His,Pro以外のすべてのアミノ酸に対し反応性を有しており、特にAla,Met,Ile,Val,Leu,Phe,Trp等の疎水性アミノ酸に対し高い活性を示した。また、各アミノ酸に対応するケト酸に対しても同様の活性を示した。 本酵素のアミノ末端アミノ酸配列に基づく合成オリゴヌクレオチドをプローブとして本酵素遺伝子をクローン化し、塩基配列の決定を行った。また、lacプロモーターを用いて大腸菌における本酵素の生産に成功した。本酵素は既知アミノ基転移酵素とアミノ酸配列上の高い相同性は有さず、基質特異性だけでなくアミノ酸配列上からも本酵素の新規性が確認された。塩基配列データベースを用いた相同性検索から、本酵素遺伝子は超好熱菌Sulfolobus solfataricus、Pyrococcus horikoshiiの未同定遺伝子と相同性を有することが示され、進化系統樹上では、MsATとこれら未同定遺伝子は他のアミノ基転移酵素と独立した新規のクラスターを形成した。
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