研究概要 |
ABCスーパーファミリー蛋白(ABC蛋白)は、MDR1,MDR2,MRP,MOAT,CFTR,SUR1,SUR2などであり、1分子内に12から17の膜貫通部位と2つのよく保存されたATP結合領域をもつ。これらは皆ATPによって駆動あるいは制御されるが、それらの機能はポンプ、フリッパーゼ、チャネル、チャネル・レギュレーターと多様である。本研究では、SUR1、SUR2 MDR1、MRP ATP加水分解反応を比較することによって、ABC蛋白が細胞環境をモニターするシグナル分子としてATPをいかに利用し、あるいはATPによって駆動されているかを解明しようとした。SURlは細胞内のATPとADPの濃度をモニターすることによって、複合体を形成している内向き整流性Kチャネルの開閉を制御する。8-azido-ATPを用いた光親和性結合実験によって、SUR1のATPとの相互作用を検討した。その結果、SUR1が8-azido-ATPを強く結合すること、その結合はNBD2の変異によって影響されないが、NBD2の変異によって損なわれることが明らかになった。さらに、SURlのATP結合はMgADPによって強く阻害されるが、阻害効果はNBD2の変異によって低下した。これらの結果は、NBD1がATPを、NBD2がMgADPを結合し、NBD1とNBD2のヌクレオチド結合が協調していることを示唆しており、SUR1とATPの相互作用は、トランスポーターであるMDR1/P-糖蛋白質と大きく異なっていることがわかった。
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