研究概要 |
サチライシンYaBはサチライシンBPN'と同様にプレ・プロペプチドを持つ前駆体として生合成される。プレ配列は当該前駆体の細胞膜透過過程でシグナルペプチダーゼの作用で切断され、プロ体が培地中に分泌され、プロ体分子内で酵素の自触作用で成熟体、即ち活性型酵素になると考えられる。然るにサチライシン族酵素では、まだ何人もこの分泌されたプロ体の単離ならびにその構造決定に成功していない。サチライシンBPN'に於いてはプロ配列は活性型酵素の構造形成のガイド配列として機能しているという多くの情況証拠があるのでプロ体の構造解析は是非とも必要である。我々は平成9年度にサチライシンYaBのプロ体を得る実験系を構築した。即ちサチライシンYaB活性中心変異体(Ser214Cys)をコードするプラスミドを保持する枯草菌各種を培養した場合、変異株WB600(6種の菌体外プロテアーゼ欠損変異株)の場合のみ菌体外にウエスタンブロティング反応性の蛋白質(プロ体なら分子量36,000の筈が電気泳動上では分子量52,000と異常に高い分子量を示す)を分泌することを認めた。これは実験系の構築から考えてプロ体と想定されるがこのような異常分子量を示すものの報告は従来ない。恐らく構造上特異な形をしていると考えられる。ただこの想定プロ体の生成量は少なかった。平成10度はこの生産性の向上とこれが真のプロ体であるかの確認をすることが目的であった。生産性の向上に関しては、坂口フラスコによる菌の培養では条件を色々変えてもうまく行かず、結局L字管による小規模培養を多数行なう以外によい方法が見つかっていない。プロ体の単離はなかなかに難しく従ってプロ体が特異な構造をしているかどうかまだ分かっていない。
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