研究概要 |
低温性氷核活性細菌,Pseudomonas fluorescens KUIN-1は,低温ショックタンパク質(CSPs)として類別されるタンパク質の誘発によって温度の低下に適応する。著者らは菌株KUIN-1の26-kDaのcSPsタンパク質の機能を見いだした。菌株KUIN-1に18℃から4℃に低温ショックを与えると26-kDaタンパク質が誘導された。その26-kDaタンパク質は,細胞を4℃にした場合に生産され,硫安による沈殿とカラムクロマトグラフィーによって精製された。精製された26-kDaタンパク質は,約159-kDaの分子質量で26.5-kDaの6量体から構成され,N末端はGln-Ala-Ala-Try-Tyr-Pro-Ala-His-His-His-Gln-Gln-Val-Gln-Gln-His-Trp-Gly-His-His-であった。26-kDaタンパク質は,低温感受性酵素である乳酸デヒドロゲナーゼの凍結による変性に対して高い保護効果があった。26-kDaタンパク質の特徴は植物の低温誘導タンパク質(COR)と類似している。 また,氷核活性細菌,Erwinia uredovora KUIN-3由来の菌体外氷核活性物質(EIM)の培地中への分泌は,培地中の酵母エキスの濃度に比例して増大し,EIMのクラスA,BとCの全ての構造の分泌が活性化された。この分泌量は,ELISA法を用いることによって,氷核形成温度,T_<50>(℃)で示すことができた。この分泌に関与している培地成分について調べたところ,アミノ酸のリシンであることが明らかとなった。リシンの添加によって,EIM中のポリアミン含有量が変化し,それによってEIMの表面電荷が5.2から4.9に変化した。カダベリン添加によっても,表面電荷が変化し,EIMの分泌量が増大した。これらの結果から,氷核タンパク質(INP)の凝集体の表面電荷は,INPの移動およびEIMの分泌に重要であることがわかった。この分泌,特にクラスB構造の分泌は,H^+-ATPaseの阻害剤であるN,N′-dicyclohexylcarbodiimide(DCCD)によって著しく阻害され,この分泌にATPが必要であることが明らかとなった。
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