研究概要 |
イネの葉身屈曲試験法(ラミナジョイント法)を用いて,ブラシノステロイド類の活性を定量的に評価する系を確立した。すなわち,ブラシノライドを標準応答区として常時用い,その最大応答を100%とした.各種化合物によるイネ葉身屈曲に及ぼす効果を様々な濃度において調べ,コントロール(0%)に対する応答と濃度の関係から、ブラシノライドの最大応答の50%を与える濃度である中央応答濃度を求めた.活性の指標としては,その逆対数値を用いた.ブラシノライド,カスタステロン,エピブラシノライド,ホモブラシノライドについて,繰り返し活性値を求めたところ,それぞれについて再現性の高い値の得られることが分かった.これらの値を,これまでに報告されている活性値,すなわち140゚の葉身傾斜角度を与える物質の濃度から評価される値と比較したところ,若干のバラつきは認められるが両活性間に良い対応関係が認められた.また,化合物の原溶液の調製にはジメチルスルホキシドの好ましいことがわかた.この評価系の利点としては,1)検定ごとのばらつきが小さく、各化合物の活性値を安定して得られる.2)温度条件の変化などの実験条件の違いによって、葉身の傾斜角度がこれまでホルモン活性評価において標準的に用いられている一定角度(140゚)に達しない場合でも,活性を測定することが出来る.3)角度設定における恣意性を排除し、より客観的な評価が可能である.などが挙げられる.また,上記で確立した検定系を用いて、昆虫の脱皮ホルモンであるエクダイソン類およびエクダイソン様活性物質であるジベンゾイルヒドラジン類、さらには他の動物ステロイドホルモンである胆汁酸、糖質コルチロイド、卵胞ホルモン,さらには幾つかの合成化合物について生物検定を行なったたが,どれもブラシノステロイド様ホルモン活性を示さなかった.ブラシノライドとエクダイソンの3次元構造を比較した結果,C-17におけるアルキル鎖とステロイド構造のD-環との成す角度が大きく異なることがわかった.
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