研究概要 |
Bipolaris sorokiniana OB-25-1株の生産する植物毒sorokinianinはセスキテルペン、prehelminthosporolにC3単位が付加した構造をもつ.安定同位体標識した酢酸やコハク酸の投与実験,置換培養実験などが行われ,このC3単位がTCA回路の酸由来であることが証明された.TCA回路の酸の中ではコハク酸,フマル酸,リンゴ酸,オギザロ酢酸等がC3単位の直接の生合成前駆体と考えられる.もし,酸素18標識したリンゴ酸の投与実験を行い,sorokinianinの2'位の水酸基が標識されるかされないかが分かれば,直接の生合成前駆体がコハク酸とフマル酸のグループ,リンゴ酸とオギザロ酢酸のグループの2つのグループのうちのどちらかであるかが証明できよう.そこで、酸素18で標識したリンゴ酸の調製を試みた.また、acetylsorokinianinの質量分析における開裂パターンを高分解能質量分析におけるフラグメントイオンの精密質量とリンクドスキャンによるドータイオンの確認により決定した.これが、平成9年度の研究成果である.平成10年度は,酸素18標識したリンゴ酸の投与実験を行った.先ず、B.sorokinianaOB-25-1株をFries培地に接種し,24度で7日間培養した.培養後,培地をリン酸緩衝液に代えてさらに2日間培養し,次にprehelminthosporolと酸素18標識したリンゴ酸を含む緩衝液に代えて4日間培養した.培養後,培養濾液からsorokinianinを抽出,カラムクロマトにより精製,アセチル化の後,m/z83,85,115,117,143,145,392,394のイオンを選びGCSIM分析を行った.その結果,sorokinianinのC3単位部分は酸素18で標識されていないことがわかり,したがって,C3単位部分の直接の前駆体がコハク酸またはフマル酸であることが証明された.
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