研究概要 |
ナラ類を主体とする落葉広葉樹二次林地帯では,古くから針葉樹の人工造林がおこなわれてきたが,最近で在来樹種を活かした天然下種更新に対する期待が高まっている.天然下種更新法としては,傘伐法や母樹保残法が,実行容易であり,更新期間が短いなど,多くの利点をもっている.本研究では,コナラ二次林へのこれら下種更新法の適用について,稚樹の生態生理の面から,様々な検討をおこなった. 1. 林分種子生産の年変動は,隔年周期が基調となっているが,周期性が不明瞭になる期間もあった.立木レベルの種子生産の年変動は,各立木でたがいに類似しており,顕著な同調性が認められた.明らかに"成りやすい木"と"成りにくい木"があった.立木の種子生産と個体サイズとの間には,有意な相関はなかった. 2. 種子は,林床のミクロな窪地に多く溜まり,母樹落葉の堆積場所も同様であり,そこでは種子乾燥害はきわめて稀であった.種子の落下は,樹冠下およびその周縁に限られ,稚樹の分布パターンもそれにしたがった. 3. 更新面に発生した稚樹は,高い光合成能力を示し,強光阻害を受けることなく,旺盛な根系発達により高温乾燥期でも気孔コンダクタンスを高く維持した.稚樹のPmax(光飽和光合成速度)は,生育日射量の増大により大きく上昇し,強い陽樹性を示した. 4. 雑草木の刈り払いや除去をおこなわない限り,多くの稚樹は数年で雑草木に埋まる.しかし,各雑草木種の被度が同一でも,雑草木種により稚樹成長への影響が,異なっていた.最も強い被圧をもたらすのは,ササ類であった.ササ類の繁茂を抑制できれば,更新は成功するとみられ,小型バックホウによる地下茎除去がきわめて効果的であった.
|