研究概要 |
ブナ天然林が分布する地域を1.原生林地域、2.二次林地区と大きく2つに分け、それぞれの地区におけるブナ林に対するモニタリングシステムの構築を試みた。原生林地区は急峻な山岳地帯に分布しており、地形補正が必要である。ここでは、ミンナート関数による地形補正が有効であることを明らかにした。補正後の輝度値を使用して、現地調査を行った21個のプロットの林分因子との関連を解析した。その結果、バンド6以外の各バンドの輝度値、タッセルドキャップ、植生指数と、うっぺい度、材積、断面積合計、haあたり本数との間に有意な相関関係が得られた。一方、二次林地区では、ブナ混交率とバンド4,5,6における平均輝度値との間に有意な相関関係が得られた。 ブナ林のモニタリング゙を構築する際には、ブナ原生林と二次林では、モニタリングの意味が大きく異なる。原生林の場合は、林分を維持する上で上木の本数管理が特に重要である。一方、二次林ではブナの混交率の変化を捉えることが最も重要である。原生林ではRVIとうっぺい度との間の回帰式を、二次林ではバンド4,5,6の平均輝度値とブナ混交率との間の回帰式を利用することによりブナ天然林の変化が衛星画像上から把握できるモニタリング例を示すことができた。その一方でブナ林は社会環境と自然環境の両方の影響を受けて変化していく。人間活動の強度が景観多様度の変化に大きく影響していることが分かった。ブナ林のモニタリングを構築していく上で人間活動の強度を十分考慮しなければならない。
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