研究概要 |
プロセッサー作業によって発生する枝条を林地にそのまま還元する方法とチップ化して還元する方法について比較するとともに,放置された枝条堆積物の移動量を明らかにし,以下の2点の課題について研究を実施した。 (1)枝条の還元によって,林地の環境はどれだけ違うのか。どのように還元するべきか。 (2)堆積した枝条が下方にどの程度移動するのか,枝条の養分はどれだけ流出するのか。 初年度には,(1)チップ散布試験プロットを設定し,チップを通過する雨水のpH,土壌養分量および苗木成長量を測定し,枝葉とチップ散布によって酸性緩和効果と養分量の増大を明らかにした。(2)放置された枝条堆積層の数ケ月後の層積変形を測量し,枝条堆積層は下方に移動することなく,その場で沈降することを明らかにした。 2年次には,(1)苗木周囲の雑草木現存量と土壌養分量を調査し,チップ散布による雑草木の発生・成長抑制の効果を実証した。(2)人工降雨装置による散布チップの移動量を測定し,チップ厚が小さいほど飛散しやすいことを確認した。 3年次には,(1)土壌養分量,苗木成長量および苗木周囲の雑草木現存量を測定し,還元方法について検討し,3年経過後も前述した傾向が継続することを確認した。苗木の成長に対する効果は明確ではない。還元方法としては枝条をチップ化し、架線装置で返送し,林内で待機する不整地走行車によって散布する機械化が必要であることを指摘した。(2)枝条堆積層の変形を測量し,堆積層下方の土壌分析を行い,層積の減少率は1ケ月あたり0.5%であり,堆積枝条の下方林地への影響は数m以内であり,養分量の増大と酸性緩和効果があることを明らかにした。 以上の成果から,枝条を林地に還元する方法としては,2mm厚程度の小チップや粉砕処理された材料を苗木周囲に散布することが雑草木の成長抑制・養分供給・土壌の酸性緩和において,効果的であり,積極的に還元する意義が認められた。
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