研究分担者 |
近藤 洋史 森林総合研究所, 九州支所・育林経営部, 主任研究官
吉本 敦 統計数理研究所, 調査実験解析研究系, 助教授 (10264350)
小八重 祥一郎 宮崎大学, 農学部, 教授 (10038276)
寺岡 行雄 鹿児島大学, 農学部, 講師 (40264105)
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研究概要 |
本研究は、中山間地域における環境保全と経済発展の調和を図り得る木材安定供給可能な森林資源管理のあり方を計量的に検討しようというものである。以下に、主な研究成果を示す。 1)生産費分析:現在の価格水準では、造林,伐採等の生産費用を賄うことができないことが分かった。また造林補助金を考慮しても再造林できるほど十分な収入を得ることができず、新たな林業助成策が講じられない限り,我が国の持続的な林業経営を達成することが困難であることが明らかとなった。 2)最適間伐戦略モデルによる分析結果:価格関数からなるスギ林分成長モデルを基に動的計画法を適応して,間伐補助の最適伐期への影響について分析を行った。その結果,補助金額が増加するに従い最適伐期が長くなる傾向が観察され,最終的に40年に止まる。割引率を1,2,3%と変化させると,割引率1.2%に比べ3%の場合は,補助金額の変化に対して最適伐期はそれほど敏感に反応しないことが分かった。 3)岩手,静岡,宮崎の国産材需給モデルの推定結果:生産基盤が充実し我が国最大のスギ生産量を誇る宮崎の国産材製材需要の相対価格弾性値は-4.6と非常に弾力的な結果を得ている。岩手は素材需要関数に国産スギと米材の相対価格の弾性値は-0.29であったが,消費地に近い静岡では関数の方がむしろ良い結果を得た。 4)木材資源・供給モデルによる分析結果:現在の森林資源賦存量を基に,どの程度の木材が資源的に安定供給可能であるかを線形計画法により検討した。宮崎は許容率10%を用いた場合、広島は許容率30%を用いた場合に第10期以降の1期(5カ年)当たり伐採量が、それぞれ9,490千m^3,2,095千m^3最大値を示した。両県における許容率の差は,広島は相対的に生産基盤が整備されていないこと,また安価な米材の市場価格への影響が宮崎よりも大きいといった林業を取り巻く環境の違いに起因している。
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