研究概要 |
熱帯樹木における成長の周期性を示す構造としての成長輪の特徴を調べた。これをもとにして成長輪と年輪との関係を調べ、年輪年代学に関する基礎的知見を得ることを目的とした。実験は3つのサブテーマで行った。 1. 形成層構造の季節的特徴 タイの熱帯季節林に生育するEucalyptus camaldulensis,Dipterocarpus alatus,Tetrameles nudiflora、またマレーシア熱帯多雨林に生育するShorea acuminataを用い、形成層構造の1年内での特徴を調べた。その結果、季節林の試料において、乾季においても形成層で細胞分裂が見られた。成長輪界構造が不明瞭であることの一因と考えられる。 2. 木部成長と成長輪 マレーシアに植栽したHevea brasiliensis,Acacia mangiumの若木において、伸長・肥大成長のリズムとフェノロジー、また木部の成長輪構造との関係を調べた。その結果、伸長・肥大成長のリズムと関連した成長輪構造が出現することがわかった。若木において成長輪は1年内に数本形成された。 3. 植栽年数の判明している造林木における成長輪構造の解析 マレーシアの熱帯多雨林地帯に生育する植栽年数の判明している試料木を用い、各円盤における成長輪の肉眼的観察と光学顕微鏡による観察を行った。用いた試料は代表的造林樹種のTectona grandis,Hevea brasiliensis,Acacia mangium,フタバガキ科のShorea acuminata,Shorea leprosula,Dryobalanops aromaticaである。円盤の肉眼的観察により、円周方向に連続した環状の構造の成長輪を捉えることができた。ただし樹種により非常に弱いもの、円周方向に不連続や他の成長輪と合流するものがあり、複雑であった。光学顕微鏡観察の結果、成長輪界において木繊維の壁が肥厚する等の特徴を捉えることができた。これらの中には偽年輪と考えられるものも多数存在した。現段階では、いくつかの樹種で年輪構造に対応する成長輪構造を特定することができた。
|