研究概要 |
造礁サンゴが大規模に死滅した場所にホンダワラ類などの大型褐藻類が繁茂した場合、そこの魚類群集がどのように変化するかを明らかにするため、1997〜1999年10月に沖縄県西表島の網取湾で野外調査を行った。網取湾のサンゴは1981年頃にオニヒトデの食害を受け、ほぼ完全に死滅したが、現在このような死滅サンゴ域が存在する一方で、サンゴの回復がみられる場所や大型褐藻類が繁茂しはじめた場所(以後、ガラモ場と呼ぶ)が一部存在する。そこで、死滅サンゴ域とガラモ場(大型褐藻類の被度は1997年で約9%,1999年で約36%、高さは1997年で約40cm,1999年で約70cm)にそれぞれ1m×20mのトランセクトを5本設置し、魚類(成魚と稚魚)の種数と個体数を計数した。 観察した成魚の種数をガラモ場と死滅サンゴ域で比較すると,どの年においても有意な差はみられなかった。一方,個体数ではすべての年でガラモ場の方が有意に多かった。また,稚魚の種数と個体数においては,どの年にも両域間で有意な差は認められなかった。 このように、死滅サンゴ域にガラモ場が形成されると、成魚の個体数は有意に増加することが判明した。しかし,この個体数の増加はわずかであり(20m^2あたり5〜6個体),また,成魚の種数や稚魚の種数と個体数が増加しなかったことから,ガラモ場が形成されてもそこの魚類群集はあまり変化しないことが明らかとなった。
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