研究概要 |
紅藻のオゴノリ属の仲間には,寒天の原料として利用されるものがある。1980年代より日本の沿岸に2m以上の葉長になる柱状分枝のオゴノリ類の異常繁殖が話題になった。また,1994年に神奈川県城ヶ島に二股分枝で扇状になるオゴノリ類が発見され,この2種は帰化種とされた(大野1996)。柱状の藻体はG.lemaneiforumisセイヨウオゴノリ,扇状の藻体はG.Coronopoforiaヨレオゴノリと1998年に出版された吉田著"新日本海藻誌"に記載された。この2種から抽出される寒天の質・量ともに良質であり養殖もしやすいことが,大野らの研究で明らかになった。セイヨウオゴノリは,3年間のこのプロジェクト調査で,有明湾,大分県国東半島,広島湾,兵庫県沿岸,愛媛県西条など瀬戸内海沿岸各地,徳島県の吉野川,那賀川河口,土佐湾,三河湾,千葉県から標本を得たが,東京湾より北の沿岸では,確認出来なかった。セイヨウオゴノリには,主軸が赤い藻体と緑色の藻体が確認された。赤い主軸のものは,最近,山本(1998)によってベニオゴノリと和名が新たにつけられて,分類的に新たな問題が生じた。この3年間の調査で,セイヨウオゴノリは,繁茂が年度によって著しく変動することがわかった。さらに,日本で,最近,食用に採取されているオゴノリの多くが,セイヨウオゴノリであることが明らかになった。 ヨレオゴノリは,1997年に浜名湖で採取されたが,1999年の調査では消失しており,ヨレオゴノリは,生育が安定しない仲間であることがわかった。ヨレオゴノリは,3年間の各地の調査で確認されたところは,神奈川県城ヶ島と千葉県館山であり,関東の半島の先端部である。それに八丈島が加わり3ヵ所で,分布域が狭いことが明らかになった。これらの帰化種と思われるオゴノリの試料からDNAを抽出することができ,RAPD法で解析すると,セイヨウオゴノリされる土佐湾産,徳島産,広島産、千葉産のDNAのバンドは酷似していた。従って,形態で判定してきたセイヨウオゴノリはDNA解析の結果と一致した。また,ベニオゴノリとして主軸が赤い藻体も主軸が緑色のセイヨウオゴノリと同じDNAバンドであり,同種とした方が良いことがわかった。ヨレオゴノリは,神奈川産と八丈島産とはDNAバンドが異なり二つのタイプに分かれることがわかった。
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