研究概要 |
魚類の摂餌行動には顕著な日周性がみられる.しかし,これらの日周性が生物時計により駆動されているかどうかは未だ明らかにされていない.そこで本研究においては,魚類の消化機能が生物時計により制御されている可能性を検証することを目的とした. 1. 各種消化酵素活性の日周性の解析 明暗条件ならびに恒暗条件下でニジマスを飼育し,1週間の絶食の後,消化酵素活性測定用の試料として胃,幽門垂.腸管を採取した.現在,アミラーゼならびにリパーゼ活性の測定を行っている. 2. 消化管におけるメラトニン機能の検討 生物時計指標ホルモンであるメラトニンが消化管において産生されるかどうか検討した.RIAによる検討の結果,消化管にメラトニンが存在することが判明した.メラトニンが消化管において合成されている可能性を検討するため,メラトニン合成酵素のひとつであるarylalkylamine N-acetyltransferase(AANAT)に対する特異的抗血清を用いた免疫組織化学的検討を行った.しかしながら,ニジマス消化管(胃,幽門垂,腸)において陽性反応は認められなかった.また,AANAT遺伝子の発現の有無についてRT-PCR法を用いて検討したが.昼夜ともにAANAT mRNAは検出できなかった.さらに2-[^<125>I]iodomelatoninをリガンドとしたラジオレセプターアッセイにより消化管におけるメラトニン受容体の存在の有無について検討したが,特異的結合は認められなかった. 3. 摂餌同調性生物時計の存在部位の検索 摂餌同調性生物時計の脳内における存在部位についてimmediate early geneの産物であるcFos抗体(Cambridge Research Biochemicals社)を用いた免疫組織化学により試みた.しかし,本抗体により実験の供試魚として用いたキンギョ脳内に陽性反応を見いだすことは出来なかった.
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