研究概要 |
コレステロールおよびα-トコフェロールで反応場の環境を変化させた際にリン脂質の酸化に与える影響を明らかにする目的で、パルミチン酸とアラキドン酸を構成脂肪酸にもつグリセロリン脂質であるホスファチジルコリン1-hexadecanoyl-2-[cis,cis,cis,cis-5,8,11,14-eicosatetraenoyl]-sn-glycero-3-phosphocholine(PC16:0-20:4)にコレステロールを添加して、リポソームとしておよびメタノール均質溶液として、ラジカル開始剤AAPHあるいはAMVNで酸化を開始した。この際に生じる1次酸化生成物のハイドロパーオキサイドを還元、水素添加後に7%BF3/メタノールによるメチル化を行い、アラキドン酸ハイドロパーオキサイド由来の脂肪酸メチルエステルを調製した。さらに、水産基をTMS化して、GC/MSによりハイドロパーオキサイド位置異性体組成を決定した。 メタノール均質溶液中における酸化では、2種のハイドロポーオキサイド異性体の割合5-hydroperoxy arachidonic asid(5-OOH)/15-hydroperoxy arachidonic asid(15-OOH)はほぼ1で、両者は均等に生成されていた。一方、リポソーム中における酸化では5-OOHの生成量は15-OOHの約2倍であった。コレステロールの添加はこの生成割合に影響しなかった。一方、トコフェロールはPCに対するモル比0.02の比較的高濃度領域において5-OOH/15-OOHが1近くになり、これよりも低濃度では影響しなかった。以上の結果から、トコフェロールはリポソーム膜においてPCと共存することによって水素供与体として動き、PCリポソームの酸化不均一性を解消する方向に働くものと考えられた。
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