研究概要 |
本研究では,先物市場と現物市場との関連性,先物市場の効率性,在庫の役割を考慮した先物価格の形成要因について計量経済学的な分析を行った.CBOTの大豆期近価格は在庫水準や生産条件に反応して変動するが,それは東京におけるIOM大豆相場の各限月にも強い影響を及ぼしている.しかし,東京の期近価格は期先価格とは異なった動きをみせている.これは期近で投機的行動が頻繁に行われており,それが期近価格特有の動きや現物の受け渡しとなって現れていること,期近価格は輸入価格よりも強く現物価格に影響していることを明らかにした.なお,IOM大豆の在庫データには問題があり十分な分析ができなかったが,絶えず供給過剰の傾向にある.また製油転用にかなりの数量があり,それが在庫調整的な役割を果たしていると考えられる. 先物市場の効率性については,東京の米国産大豆先物市場の効率性を不偏性仮説と裁定機会不存在性仮説という二つの観点から検討した.実証分析では,非定常時系列分析の代表的な手法である共和分分析を用いた.いずれの仮説においても,期近限月において先物価格は現物価格と一定の関係を保って推移している.特に第2限月と第3限月では裁定機会不存在性仮説に基づいた効率的な価格形成がなされている. 価格形成要因についでは,米国と日本のトウモロコシ先物市場を計量的に分析した.CBOTにおける期近価格では,在庫水準が決定要因として重要であること,生産量が確定していない月では生産予想も,価格形成要因となっている.次にわが国の先物市場におけるトウモロコシの価格形成では,CBOTの価格と為替レート,および海上運賃が重要な決定要因であることが確認された.
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