研究概要 |
魚類養殖水域では養殖時に発生する養魚が食べ残した餌やその糞に起因する有機物を含む底質が多量に堆積している。堆積した底質中の有機物はそれが生物化学的に酸化することによって海水中の溶存酸素濃度を低下させ、水質に重大な影響を与えている。 本研究は、底質の酸化還元電位(ORP)とその酸素消費量に関するこれまでの研究成果に基づき、新たに消費試験データを追加し、また、実験によってこれらの有機汚泥底質による酸素消費現象やDO濃度の低下現象を明らかにするものである。以下に研究成果の概要を示す。 1) 還元化底質の有機物に起因する総酸素要求量が、底質のORP,pH,水温から求められること。 2) 酸素消費量を、海水のDOが7mg/l定常状態での酸素要求量に補正することで、その総酸素消費量をBOD成分と、初期COD成分に分離が可能であることを示し、また、BOD,CODの両消費量およびその速度と底質のORP値との関係を示し、ORPから計算可能とした。 3) 堆積状態における底質の酸化する深さは表層から約9mmであり、総酸素消費量に対する堆積状態における酸化割合は約0.30であることを示した。 4) 還元化した底質の堆積状態における総酸素要求量は海水のDO濃度条件が異なっても、底質のORP値から予測計算できることを示した。 上記の結果から、ある酸化反応時間後のDO濃度を、底質のORP,pH,水温,底質直上の流速の条件から予測する計算プログラム(ORPモデル)を作成し、そのモデルによるDO濃度の計算結果を、密閉循環水路を用いて行った室内水理実験の結果の値とを比較し、その妥当性を確かめた。
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