研究概要 |
1, 目的 近年,疾病の予防に食品の生体調節機能性を応用し,人間の健康維持および増進に寄与する食品を開発しようと考えられるようになった.本研究は,プロバイオティク乳酸菌として有望視されているアシドフィラス菌の免疫賦活化機能性因子を解析することを目的としてる.具体的には,リンパ球活性化因子の分離・同定を行い,腸管関連リンパ組織(GALT)の賦活化機構につて検討した. 2, 方法 Lacidophilusグループ乳酸菌 16 菌株由来核酸成分によるC57BL/6およびBALB/cマウス由来各種免疫細胞の活性化をリンパ球の幼若化を指標として検討した.活性化リンパ球の誘導はCD69および86をマーカーとして,フローサイトメトリーにより解析した.また,リンパ球の分離・精製は磁気細胞分離システム(MACS)を用いた.活性を示した核酸成分より活性を有するDNAクローンを単離し,活性化因子をクローニング後その塩基配列を決定した.ホモロジーの高かった配列を化学合成し,活性モチーフを同定した.活性DNAおよびモチーフのリンパ球に対する結合性を解析し,免疫担当細胞からのサイトカイン遺伝子の誘導をRT-PCR法により検討した. 3, 結果 Lacidophilusグループ乳酸菌由来DNAは,16菌株中 12菌株で脾臓由来B細胞に対し,有意な幼若化活性が認められた.中でも,L.gasseri 1131^T由来DNA(DNA1131)のSau3AI消化で最も高い活性が認められた.活性を示すDNAのクローニングを行ったところ,321コロニー中108コロニーのDNAクローンでS.I.値が2以上の有意な活性が認められた.活性を示したDNAクローンの塩基配列を決定し,相同性の高い10個のモチーフより,2個の新規な活性DNAモチーフが得られた.活性DNAおよびモチーフは大型のBリンパ球に結合し,CD69および86の発現を増強することが判明した.さらに,免疫担当細胞からのサイトカイン遺伝子の発現誘導が認められた.本研究の成果は,プロバイオティック乳酸菌L. gasseriを含む食品を機能性の食品として開発するための基礎を築くものである.
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