研究概要 |
修正合成卵管液(mSOF)を用いた場合の体外受精率およびその後の受精卵の発育・発生を左右すると考えられる種々の要因についても検討した。すなわち、体外受精系については、基礎受精培地の比較、培地内のエネルギー源やアミノ酸の必要性の検討を行うとともに、最適な気相(酸素濃度)や卵子/精子の密度などの受精環境についても調べた。また、受精卵の体外培養系については、mSOFへのアミノ酸、とくに卵管液および子宮液内に高濃度に存在するグリシンとタウリン、ブドウ糖,細胞増殖因子(インスリンおよびIGF-1)の添加効果について検討するとともに,アミノ酸添加時の培地内アンモニア濃度の変化や培地作成用の超純水中のエンドトキシンの影響についても調べた。 その結果、受精時の気相中の酸素濃度は5%の方が受精後の胚発生率が高くなることが分かった。媒精培地中の最適ブドウ糖濃度は基礎培地により異なり、mBO液では5〜13.9mM、mSOFでは0〜1mM濃度であることも明らかになった。また、mSOFを用いた場合、mBO液に比べて少ない精子数(濃度)で高い受精率の得られることも分かった。受精卵の体外培養系については、19種の基本的な必須および非必須アミノ酸のほか、グリシンおよびタウリンの添添加により胚発生率が改善されること、インスリンおよびIGF-1はIGF-1レセプターを介して胚に働きアミノ酸取り込みを促すことにより胚発生率を向上させることが明らかになった。また、アミノ酸を含むmSOF中にはアミノ酸の自然崩壊と胚の代謝によりアンモニウムイオンが蓄積することや、mSOF中の最適なブドウ糖濃度は胚の発育ステージによって異なり、8細胞期を境に大きく変化することも明らかになった。さらに、本研究で開発・確立した系を核移植(クローン)胚の作成・培養に利用して、効率良くクローン胚を作成・培養できることも確認された。
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