研究概要 |
家禽の経口免疫寛容については殆ど明らかにされておらず,ワクチン混入物である各種動物蛋白がワクチン本来の特異的免疫機構に対してどのように影響するのかについては全く解明されていない。また,昨今養鶏業界で使われている動物性蛋白不含飼料で飼育されたニワトリに対するワクチン混入動物蛋白の影響についても全く検討されていない。 そこで,上記の問題を解明するために,1.動物性蛋白未感作のニワトリを作製して,全身性の液性免疫応答に対する経口免疫寛容が成立するのか否か,2.ニワトリにおける全身性の液性免疫応答に対するバイスタンダーサプレッションが成立するのか否か,さらに,3.全身性免疫応答が動物性蛋白に対して既感作であることが,同抗原に対するバイスタンダーサプレッションの成立にいかなる影響を与えるのか,について検討を加えた。 その結果,1.ニワトリでは比較的長期にわたる抗原投与によって経口免疫寛容を誘発しうること,2.経口免疫寛容による全身性の体液性免疫応答の抑制は比較的軽度であること,3.全身性の液性免疫応答に対するバイスタンダーサプレッションは存在するが,それによる抑制は比較的軽度であること,4.動物性蛋白に対して全身性免疫応答が既感作である場合,同抗原に対するバイスタンダーサプレッションは成立せず,逆に全身性の免疫応答が亢進されることが明らかとなった。また,経口免疫の成立機序や消化管の非特異的生体防御機構に関する基礎的知見も同時に得ることができた。本研究で得られた成果の内,未公表のものについては今後さらに若干の検討を加えた上で,原著論文として逐次公表する予定である。今後,これらの成果を踏まえて,常在細菌の制御やワクチン等のより効率的な接種へ向けて研究を発展させていく予定である。
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