研究概要 |
黒毛和種の長期不受胎牛における受胎障害防除のためのプログラム立案を目的に,黒毛和種の長期空胎牛の受胎促進を目的としたリハビリ牧場で,受胎促進試験と放牧期間中の臨床繁殖学的検査を行うとともに,受胎の有無と臨床生化学的検査成績との相関性について検討した. 長期空胎の黒毛和種繁殖牛を対象に入牧後経時的に直腸検査と超音波画像診断装置による繁殖機能の検査,および血中TP、Ht、Alb、AST、NEFA、T-Cho、TG、ApoB-100、Glu、BUN濃度を測定した.また,人牧初期にPGF2α製剤を投与し、発情誘起と人工授精を試みた。さらに,放牧牛において,生菌剤(PROTOCOL)投与と放牧経験の有無がBCS,脂質代謝および肝機能に及ぼす影響,および受胎性に及ぼす影響を検討した. その結果,人工授精によって計37頭中11頭(29.7%)が受胎した.その後の牧牛交配によって,計22頭(62.9%)が受胎し,最終的に47頭中33頭(70.2%)が受胎して退牧した.臨床生化学的検査の結果,対象牛は放牧による盛んなエネルギー代謝,飼養環境と飼料の急変と急激な運動量の増加によりエネルギーは負の状態となり,入牧後3週では体脂肪の多量な動員に伴う肝臓の脂質代謝能の低下が示唆されたが,受胎牛は不受胎牛に比較して入牧後5週以降,体重,臨床生化学的検査成績ともに安定して推移したことから,放牧牛において入牧後5週以降に人工授精,牧牛交配を実施することは受胎促進につながるものと思われた. 生菌剤投与試験において,放牧牛は入牧21日まで飢餓性脂肪肝に伴う脂質代謝能の低下が示唆されたが,それ以降は改善がみられた.また,放牧経験牛は放牧初期の負のエネルギー状態が軽度であった.さらに生菌剤投与群は非投与群と比較して早期の肝機能回復が示唆された.しかし,生菌剤投与の有無によっても受胎性に差が生じなかったことから,今後投与方法や投与量について更に検討する必要があるものと思われた.
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