研究概要 |
体細胞に発現せず精子形成過程にのみ特異的に発現する遺伝子は,減数分裂あるいは精子形成に重要な役割を担っていることが推測される。よって、今回、我々がクローニングした精子形成特異的に発現する遺伝子{解糖系酵素であるhexokinase遺伝子(Hkl-s)とheat-shock proteinのひとつであるHsp70-2遺伝子}の機能を解析するために、「ノックアウトマウスによる減数分裂及び精子形成メカニズムの解析」に関する研究を進めた。 まず、我々は、HK1-s遺伝子の構造とその発現様式を明らかにし(Mori et al.,1998)、HK1-s遺伝子ノックアウト(KO)マウスを作成するためのtarget vector作りをおこなった。また、Hsp70-2遺伝子に関しては、Hsp70-2KOマウスの作製に成功しているので、減数分裂におけるHsp70-2遺伝子産物の機能,apoptosisとの関連をHsp70-2KOマウスを用いて検索した(Mori et al.,1997)。その結果、Hsp70-2遺伝子産物は減数分裂時に形成せれるsynaptonemal complexに関係し、Hsp70-2KOマウスでは減数分裂過程のdesynapseがうまく行かず、deplotene期精母細胞からapoptosisに入ることを見出した。加えて、Hsp70-2ノックアウトマウスの精子形成細胞のごく僅かのものは、apoptosisを起こさず、先体を持った細胞まで発生していくことを発見し、この細胞はwild typeの先体をもつ精子細胞より大きいことを証明した。このことにより、我々は「減数分裂過程と精子形態形成の関係(spermiogenesis)が、ある発生段階から独立して進行する」ことを見出した(Mori et al.,1999 in press)。
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