研究概要 |
PDEの下垂体前葉内における局在について詳細な検討を行った。その活性はPRL細胞と一部のGH細胞質に観察された.PRL細胞は主に分泌顆粒の大きさと形状により3-4亜形に分類されている(Nogami and Yoshimura,1982,その他)が、その何れの細胞にも同程度の強さの活性が認められた。活性は微慢性で、特に局在を示すことなく細胞質全体に観察されることが特徴であった。同様の微慢性の活性がGH細胞にも観察されたが、反応は微弱であった。また、非常に弱い反応が一部の無顆粒性細胞のmjicrovilli上にも観察された。これらの結果はadenylate cyclase、5'-nucleotidaseの前葉内における局在と異なる点が多かった。これらの結果は、日本電子顕微鏡学会第53回学術集会、日本解剖学会第102回全国学術集会、で学会および誌上発表した。 一方、下垂体前葉を構成する細胞・組織の1つであるmarginal cell layerに大変興味深い所見が得られた。ラットの下垂体前葉と中間葉はラトケ氏嚢の遺残腔により境界されるが、両葉とも遺残腔に面する部位は単層の扁平ないし立方上皮で覆われmarginal cell layerと呼ばれている。このlayerを構成する無顆粒細胞は前葉細胞の起源の1つであるとの説もあるが、その本態はほとんど知られていない。この細胞に、adenylate cyclase,guanylate cyclase,phosphodiesteraseらの活性が認められたのである。adenylate cyclaseの活性は、遺残腔に面する線毛と微絨毛の原形質膜に観察された。これらは前葉内のGH細胞に見られる反応よりはるかに強かった。また、guanylate cyclaseの活性もほとんど同様であった。PDEの反応産物はadenylate cyclase,guanylate cyclase同様、線毛と微絨毛に観察されたが、比較的微弱な反応であった。second messengerを産生・分解する酵素がmarginal cell layerに認められたことから、これらの細胞が何らかの代謝制御機構に関与していることが強く示唆される。これらの事実は、日本電子顕微鏡学会第54回学術集会、日本下垂体研究会第13回学術集会、第5回日米合同組織細胞化学会等で学会および誌上発表された。さらに、これらの細胞内情報伝達機構に直接・間接的に関わっていることが推定されるglucose-6-phosohataseの組織細胞化学的局在や、各種細胞外器質の免疫組織学的局在の検討も合わせてなされ、学会および誌上発表している。
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