研究概要 |
マウス胎仔小腸を細胞の単位に分散した後,高密度の状態で培養すると器官様構造(organoid)が再形成される.この培養中に絨毛が形成される過程を観察し,細胞外マトリックスのひとつであるコラゲン線維の働きを観察した. 細胞塊のコラゲン量は培養5日から7日後でもつとも多くなり,この時期はもっともin vivoに近い器官様構造を示す時期と一致していた.以後培養を継続するとコラゲン量は低下した. AzCを添加し,コラゲン線維の合成を阻害すると細胞塊の表層に上皮の形成は起こらず小腸の再構築は見られなかった.この時,コラゲンは規則的な配列をとらず,コラゲン線維の量的な変化だけでなく,配列もまた器官の再形成およびその維持にとって重要であることが確認された. 今回,コラゲンが器官の再形成およびその維持にとって重要であることが確認されたことから,コラゲン線維を合成する線維芽細胞の増殖に関わる,FGFとFGFRのmRNAの発現についても検討した.培養開始から培養2・3日までにFGF-1とFGF-2の発現に差がみられ,器官の再形成との関係についてreceptorを持つ細胞の検索とともにin situでさらに検討を進めたい. 我々の用いているこの培養法は小腸の再構築過程におけるコラゲン線維の影響について観察することができ,今後,組織の再生や損傷治癒の過程におけるコラゲンの役割の解明に役立つものと思われる.
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