研究概要 |
腎近位尿細管、小腸粘膜におけるグルコースの再吸収は、Na^+依存性グルコース輸送体(管腔膜)による細胞内への“登り坂輸送"とNa^+非依存性グルコース輸送体(側底膜)を介する血管側への“下り坂輸送"の2段階上皮膜輸送によって行われる。腎近位尿細管の管腔膜には2種類のNa^+依存性グルコース糖輸送体アイソフォーム(SGLT1,SGLT2)が、側底膜には、2種類のNa^+非依存性グルコース糖輸送体アイソフォーム(GLUT1,GLUT2)が同定されている。これらの糖輸送体の欠損、発現量不足、機能不全は、糸球体濾液中のグルコース再吸収不良を引起こし糖尿の原因になる。本年は、Na^+非依存性グルコース輸送体アイソフォーム(GLUT1)の発現誘導を、新生児期ラットの成長に合わせて調べた。初めに、ラットGLUT1 mRNAに対する特異的cDNAプローブを作成し、生後5,10,15日齢ラットの腎皮質から抽出したRNAにおいて、ノーザンプロット解析を行った。GLUT1 mRNA発現量の成長に伴う変化は、100%(5d),118%(10d),132%(15d)であった。糖質コルチコイドによる発現促進作用を調べるため、4,14日齢ラットにBetamethasone(60μq/100g body wt.)を腹腔内投与し、24時間後に腎臓を摘出した。GLUT1 mRNAは、5日齢で3.8倍に増加し、15日齢では2.6倍に増加した。昨年の結果と総合すると、ラット腎Na^+依存性/非依存性グルコース輸送体遺伝子は、新生児初期(5日齢)にすでに発現し、その発現量は成長とともに増加した。Betamethasone投与は、新生児期ラット腎皮質のSGLTl, SGLT2, GLUT1 mRNAsの発現誘導に効果があり、未成熟な近位尿細管の多い5日齢ラット腎において特に発現誘導効果が大きかった。
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