研究概要 |
単球(monocyte; MO) / マクロファージ(macrophage; MΦ)系は多機能性フアゴサイト(食細胞)であり,炎症刺激を受容体で感受して遊走,接着,食作用,免疫細胞活性化,細胞障害性を発揮する.MOは循環血から組織・器官に浸潤しMΦに分化する.種々の細胞系でカルシウムイオン(Ca^<2+>)は受容体刺激一反応間を仲介する細胞内信号である.本研究ではMO/MΦのATP受容体及びCD14受容体刺激,lipopolysaccharide(LPS;バクテリア外毒素の成分)による炎症刺激に対する初期反応をCa^<2+>濃度 ( [Ca ^<2+> ]i)上昇でとらえ,さらにMΦ分化過程における反応性の変化を調べた.ヒト末梢血の遠心分離しガラスシャーレへの接着性を利用してMO画分を得,培養系に持ち込んだ.Ca^<2+>結合性蛍光指示薬fur-2を細胞内に取り込ませ,個々の細胞で蛍光強度の変化を画像処理解析装置で記録し,[Ca ^<2+> ]i成果を得た. 1) MO/MΦはATP投与P_<2U>と P_<2Y>受容体を介して一過性の[Ca ^<2+> ]i上昇を示した.適当な細胞株を低張液処理で破壊した上澄を投与して同様の[Ca ^<2+> ]i反応を得た.培養皿でナチュラルキラー細胞に攻撃され死んでいく腫瘍脂肪の周辺のMO/MΦでCa^<2+>反応が記録された.MO/MΦに貧食されるべき細胞の死を,ATPがメッセンジャーとなってMO/MΦに伝えるという考えを実証した. 2)LPSを認識する細胞表面分子とれるCD14は抗CD14抗体で刺激し,約45%の細胞が反復・減衰性のCa ^<2+>増加を示した.CD14は細胞膜にアンカーされており,この分子がCa ^<2+>信号を誘導する機序は興味深い. 3)LPSそのものによっては1ng/ml〜100μg/ml の広範囲濃度でCa ^<2+>増加反応を誘発できなかった.LPSは血漿中の他の分子を介してCD14と結合すると考えられる. 4)MΦコロニー刺激因子(M-CSF)投与のより約25%の細胞でCa ^<2+>反応が起こった.MO/MΦをM-CSF存在下培養すると大きなMΦ分化した.培養に日数を追ってCD14刺激に応ずる細胞が90%に増加し,反応のピーク値が増強した.また45%の細胞でLPSに直接反応してCa ^<2+>増加を示した.一方,ATPによるCa ^<2+>反応は減少した.分化が進行する過程で CD14受容体の発現および結合性が増強することが示唆された.
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