研究概要 |
褐色脂肪組織(BAT)のミトコンドリアには熱発生蛋白質(サーモジェニン、uncoupling protein,UCP)が存在し寒冷時の非ふるえ熱産生に関与している.寒冷および温暖馴化されたラットの肩甲骨間のラットより採取した褐色脂肪細胞をレーザー顕微鏡で検討し,ノルアドレナリン投与時のCa^<2+>濃度の変動を経時的に,空間的に測定した.またX線微小部析法を用いて細胞内イオン濃度の変動を測定した.また寒冷馴化による褐色脂肪細胞の電気生理特性の変化,UCP産生の変化についても検討した.Fluo-3をloadした温暖および寒冷馴化ラットの褐色脂肪細胞にノルアドレナリンを投与すると細胞内のCa^<2+>の増加,核のCa^<2+>の減少が認められた.X線微小部分析法では寒冷馴化ラットの褐色脂肪細胞の核,ミトコンドリアでは対照ラットに比してNa濃度の増加,K,Cl濃度の低下が認められた.また寒冷馴化時ミトコンドリアのCaは上昇し,核の核膜に近い辺縁部のCaは低下した.従来寒冷馴化時の脂質代謝による熱産生はカテコールアミンのβアゴニスト作用による細胞内セカンドメッセンジャーの関与が報告されているが,以上の結果はサーモジェニンの寒冷馴化による誘導はカテコールアミンのαアゴニスト作用による細胞内Caの増加と関連がある事を示唆している.またこの時核膜は一種の細胞内Ca貯蔵庫として機能する可能性も示唆された.褐色脂肪細胞よりtotalRNAを抽出すると,温暖馴化ラットに比して寒冷馴化されたラットのmRNAは3-4倍の発現を示した.このtranscriptをXenopusの卵に注入し,卵細胞膜の電流を測定すると電位依存性外向き電流を測定した.これらの結果を学会で報告し,論文として発表の準備中である.
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