研究概要 |
刺激伝導系異常の要因解明のためには刺激伝導系自体の加齢による機能上の内因性変化を生化学的な観点から調べることが非常に重要である.そのためには刺激伝導系細胞機能を抑制系と促進系の両面から評価する必要があるが,従来の生化学的測定手法では評価が困難であった.そこで,細胞内シグナリング機能に影響を与える各種成分の高感度測定法を以下のごとく開発した. 1)一酸化窒素(NO)シグナリングを介する細胞内二次メッセンジャー,cGMPの酵素反応による定量(Anal.Biocem,1999),2)細胞レべルでの一酸化窒素を介する情報伝達系路に及ぼすスーパーオキシトアニオンラジカルの化学発光法を用いた高感度測定法(Transplantation,1999) , 3)受容体機能に影響を与える細胞膜脂質過酸化の指標としての化学発光法を用いたホスファチジルコリンヒドロぺルオキシドの高感度かつ選択的な測定法(J.Pharmaceut.Biomed.Anal.2000),4)アドレナリン作動性受容体を介する細胞内シグナリング機能に及ぼす心筋間質内ノルエピネフリン量のマイクロダイアリシスを用いたex vivo測定法(J.Pharmacol.Toxicol.Mehods,2000). 一方,刺激伝導系機能の評価は電気生理学も加えた両面からの検討も必要である.そこで,様々なイヌ摘出心交叉環流楳本(洞房結節,房室結節,乳頭筋)を用いて特にNOシグナリングが関わっている刺激伝導系細胞のM2ムスカリン受容体の機能についても検討を加えた.l)M2ムスカリン受容体の選択的拮抗薬AF-DX116の房室結節伝導に於ける抗ムスカリン作用を検討し,アセチルコリンの副交感神経刺激によるイヌ房室結節伝導がほとんど全てM2ムスカリン受容体を介していることを証明した(J.Cardiovasc.Pharmacol.,1999),2)NOを介したムスカリン性細胞内情報伝達機構がM2ムスカリン受容体に富む洞房結節ではその作用をより強く発現し,細胞内cAMPが上昇している状態で内因性NOの誘導のみで作用を惹起するが,通常状態ではL-アルギニンやニトログリセリン投与により外因性にNOを上昇させないと作用が発現しないことを明らかにした(Am. J,Physiol.,2000).
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