研究概要 |
(1)ラット大動脈平滑筋細胞を培養しアンジオテンシンによるCa増加反応を測定すると,老化ラット由来細胞では反応性が減弱した.アンジオテンシン受容体mRNAレベルに老化による差はなかった. (2)血管収縮弛緩機能の新しい機序を明らかにする目的で,チロシンキナーゼ活性化による収縮メカニズムの有無を検討した.大動脈平滑筋を2カ月齢のラットより摘出し,等尺性張力を測定した.アンジオテンシンIIは血管を一過性に収縮させ,その反応はL型Caチャネル阻害薬であるであるベラパミルによって著明に抑制された.チロシンキナーゼ阻害薬であるゲニステインンの存在下における収縮反応は,濃度依存性に抑制された.MEK(MAPK/ERK Kinase)阻害薬であるPD98059の前処置によっては影響を受けなかった.高張カリウム溶液による脱分極性収縮にゲニスタインは無効であった.以上より,アンジオテンシンの特異的な血管収縮機序として新たにチロシンキナーゼを介する経路が示唆された. (3)老化ラットにおけるアンジオテンシンIIによる血管収縮は若齢ラットに比較して著明に減弱していた.加齢にともなう心臓血管機能の変化を受容体レベルで明らかにするために,2カ月齢の若齢ラットおよび27カ月齢の老化ラットの心室筋および単離・継代培養したラット大動脈平滑筋における,アンジオテンシンII受容体のmRNAをRT-PCR法を用いて測定した.GAPDHmRNAに対するアンジオテンシンII受容体のmRNAをデンシトメーターで測定し加齢にともなう変化を調べたところ,心筋の受容体および血管の受容体mRNAには有意の差が認められなかった.従って,老化による収縮機能変化はアンジオテンシン受容体以降の情報伝達経路の変化によると考えられた.
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