研究概要 |
イノシトールリン脂質代謝回転系と共役する受容体即ち、H_1受容体、ET受容体、P_2内受容体、B_2受容体によるアセチルコリン感受性K^+電流(IK.ACh)の制御について、単離モルモット心房筋細胞においてパッチクランプ法を用いて検討した。1)研究分担者の中谷はadenosine-5′-triphosphate(ATP)はプリンP_2受容体を介してcarbacholで誘発されたIK.AChを一過性に増強させ、その後著しく抑制し、前者は百日咳毒素感受性G蛋白が、後者は非感受性G蛋白が関与している事を示した(Hara&Nakaya,Eur J Pharmacol,324:295-303,1997)。2)さらに中谷はcarbacholで誘発されたIK,AChをエンドセリン-3(ET-3)が著しく抑制し、このET-3によるIK.AChの抑制には細胞内にinositol 1,4,5-trisphosphate(IP_3)を負荷すると完全に消失する事から、IP_3が関与している事を示唆した(Yamaguchi et al,Am J Physiol,273:H1745-H1753,1997)。3)ブラジキニン(BK)はB_2受容体を介してIK.AChを著しく抑制し、この抑制はcalphostin C(PKC阻害薬)やgenistein(tyrosinekinase阻害薬)の前処置により消失する事を見い出した。この事よりBKによるIK.AChの抑制にはPKCおよびtyrosinekinaseの活性化が関与していると考えられる(Sakamoto et al,Br J Pharmacol,125:283-292,1998)。4)ヒスタミン(HIS)はH_1受容体を介してIK.AChを一過性に増強させ、その後著しく抑制した。この抑制はIP_3やPKCおよびtyrosine kinase阻害薬の前処置では影響されず、phosphatidylinositol 4,5-bisphosphate(PIP_2)の細胞内負荷により、著しく減弱した。さらにphospholipase C(PLC)の阻害薬でも減弱傾向を示した。これらの事よりHISはH_1受容体を介してPLCを活性化し、PIP_2の加水分解を促進し、IK.AChを抑制すると考えられる。5)以上のことより、イノシトールリン脂質代謝回転系と共役している受容体でもそれぞれの受容体によってIK.ACh制御関与する細胞内情報伝達系は異なっている事が明らかとなった。
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