研究概要 |
ラット尾動脈内皮細胞におけるATP遊離機構とCa^<2+>動員機構の関連性について,画像解析装置および,ATP可視化技術を用いて,以下の3点について検討した。 【1】ATP遊離機構とCa^<2+>動員機構の機能的接点:血管組織標本において、ノルアドレナリン(NA)のα_1受容体刺激により遊離されるATPは内皮に由来するとともに,外液Ca^<2+>依存性であり電位依存性でもあった。さらにこのATP遊離はGap Junctionの機能を低下させると考えられている高浸透圧条件下及びGap Junction阻害薬(1-heptanol)の存在下 で消失した。 【2】ATP遊離機構とCa^<2+>動員機構の空間的接点:血管組織標本において、NAは内皮及び平滑筋の細胞内Ca^<2+>レベル([Ca^<2+>]i)を共に著明に上昇させたが、培養内皮細胞においては、NAによる[Ca^<2+>]i上昇は観察されず,ATP遊離も極めて微量であった。 【3】ATP遊離機構とNO産生放出機構との機能的空間的接点:血管組織標本において内皮依存性弛緩反応(L-NAME感受性)を惹起するブラジキニン(BK)は内皮の[Ca^<2+>]iを著明に上昇させたが、ATPの遊離を全く惹起しなかった。また,培養内皮細胞においても,同様に[Ca^<2+>]iを上昇させたが、ATPの遊離は惹起しなかった。 以上の結果より、α_1受容体に連関したATP遊離機構には,内皮細胞のCa^<2+>動員機構に加え平滑筋細胞のCa^<2+>動員機構も関与していること、さらに両細胞間のGap Junctionが重要な役割を果たしているのではないかという新しい可能性が示唆された。従ってATP遊離機構とNOの遊離機構に連関する細胞内のCa^<2+>動員機構の違いは、Gap Junctionの関与の有無による可能性が推察され、この点は内皮と平滑筋細胞の相互作用を解明する上でも今後検討すべき重要な課題であると思われる。
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